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クマさんダイアリー:イチョウ並木の頃

 
いまから30年後
 
太陽が雲のすきまから見えかくれする
午後の公園をふたりで歩いた。

Dscf2235   赤や黄に染まりはじめた木々の葉が太陽と風と雲の動きに
機敏に反応して色を変える。
 

  ガオー(きれいね)
 
最近あたまのまわりを巻き毛にしたようだ。

冬毛に生え変わるこの頃のくるみも、色づきはじめた街の木々にあわせるように
どんどんきれいになっていくようだ。
 
いつ言おうか・・・。私は太陽が見え隠れする木漏れ日からの誘惑に
そぞろ歩きも抑えられない衝動にかられた。 
 

ガオー(ふふっ、そうじゃないよ)
ふいにくるみが私の肩を鼻でついた。雨上がり。まだ乾ききらない艶やかな巻き毛の香りが私を酔わせた。
 

P1000862 ガガオー(ふふっ、またよろけてる、まっすぐ前を向いて)
 
笑いながらくるみが拍子をとる。 
ガオ、ガオー、ガオー(1・2・1・2...、そうそうその調子)
 
くるみと並んで、しかも4本足で歩くのは本当に久しぶりだった。人間界での生活に馴染んだためか、4本足でまっすぐ歩くというのはなかなか難しい。

 
Dscf2218_2 黄緑色になりはじめたイチョウ並木が、太陽の光加減に合わせて笑っている。
 
ガ、ガオー。(あはは、前の足をいっしょにあげちゃ進まないよ。)
  
くるみにも毒キノコを食べた後遺症が多少あったが、
あの時も、それからここ数日のくるみも何故か、何をしても楽しそうにして見せた。私は楽しそうにしている"そのこと"に早く気が付くべきだった。
 
ガオー?(あら?)

くるみが何か見つけたようだ。

P1000854 ガオー(黄色い実がいっぱい落ちてるよ) 
 
「ああ、それはギンナンだよ。ほら。」
 
 

Dscf2222 私はギンナンの実を割って中の"たね"を見せた。
 
ガオー(ふうん、ほんとだ)
 
 
イチョウもまた北海道に自生していた木ではない。

Dscf2166 荒地にもよく耐えて萌芽するため、人間はいたるところに整然と植樹しているものの、人の手がかからない山野ではほとんど見かけることがなく、野生の熊にとってこれほど"不自然"な木はないだろう。
 
 
ふとくるみが遠くへ目をやりつぶやいた。
ガオー・・・(これ、おせち料理なんかによく入るんでしょ・・・。)
 
「え、うん、そうだね・・・。」

P1000855 私はイチョウの葉とギンナンを手にとって全く違うことを考えていた。考えていた、というより、生理的なムズムズに耐え切れなくなっていた。
 
「あの、実は、これ・・・」
 
イチョウの葉とギンナンをくるみに差し出すと、感のいいくるみは、
ガオー、ガオー(ふうん、そう。いいよ、行っておいで。ギンナン拾ってるね・・・。)
 

P1000860 ため息をつきながらくるみは私に背を向け、ギンナンを拾いはじめた。
 
私はあのキノコを食べてからどうもお腹がゆるい、つまりイチョウの調子が悪い。せつかくの楽しい散歩を台無しにしてしまったが、こればかりはどうしようもない。
 
トイレから帰るとくるみはベンチにぽつんと腰をかけていた。
グワッシュ(はくしょん)
 

Dscf2271_2 ひとつかわいいくしゃみをしたのを遠巻きに見ながら近づいた。「ごめん。待った?手はよく洗ったよ・・・。」ギンナンは特有の強い「ニオイ」があるから誤解されてはよけいに怒りをかう。だがそんなことは気にせずによかった。
 
アゴを大きく開き、犬歯から臼歯まで丸出しにした
満面の笑みで
ガオー(おかえり。じゃあ、お散歩再開だね。)
 

Photo_2  拍子抜けだった。「乱れひっかき」くらいは覚悟を決めていたのに・・・。
くるみは町並みや木々や、死んだふりをしている犬を楽しそうにながめ、口数が多かった。ふと、足をとめ、葉のほとんどない街路樹を見上げた。
 

Dscf2207 ガオー(これ、アカシアだよね)
 
「え、うん、そうだよ。アカシアは定期的に人間が枝を切るんだ。その方が木にとっていいんだよ。」
 
ガオー(アカシアの花...、咲くかな...)
ふいにくるみが私の顔をじっと見つめ、そして

ガオー(楽しかったね。イチョウが黄色くなるのも見たいね。)
 
 ・・・
くるみが去ったあと、しばらくひとりで歩いた。街角からは気の早いクリスマスソングが聞こえる。
 
今日のくるみは明らかに違った。きれいで、悲しげで、楽しそうで...。
 

Dscf2165 私はさっき拾ったイチョウの実を見つめた。「くるみはギンナンを食べたことがないんだろうか。おせち料理に入ってるんだよねって...」
  
私はハッとし、次の瞬間には愕然として動けなかった。
 
  くるみは冬眠するんだ・・・。
 
イチョウが葉を黄色く染める頃は、地面が淡く白に染まる頃。私は午後の日差しと雲がイチョウの黄色い葉と雪に見え、そして軽いめまいを覚えた。アカシアの花は6月に咲く。野生の熊はジューンブライドだ。やがて来る春の喜び...。くるみは短い夏や秋の楽しい思い出を大事にしたかったんだ。そして冬眠がいかに過酷なものであるかを私は知っている。
 

 このお話しはフィクションです。(一部ハクションですが)
 

 http://www.oisi-blog.jp/2007/10/post_e6a9.html
 
 http://www.oisi-blog.jp/2007/08/post_0974.html(セイタカアワダチソウ)
   
http://www.oisi-blog.jp/2007/09/post_1a49.html(カラマツ)
 http://www.oisi-blog.jp/2007/11/post_cd94.html(次へ)

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