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新・個室『銀杏の間』にて ~粗放養殖ブラックタイガーえび~

私みたいな女のことを”バカな女”と言うのだろう・・・。
安藤美砂(35歳)は、一人で『割烹ゑびす』銀杏の間にいる。
きっと、鬱々としたオーラが出ているに違いない。
灰色で、どんよりとしたオーラだ。
「はぁ・・・」
気がつくと、深い溜息ばかりもらしている。
まだ、私が20代の頃、ヘアサロンでの他愛のない会話で、聞いたことがある。
「30過ぎてからの失恋は堪えるよ」と。
その時は、(30過ぎて失恋なんて切ないよね~。まあ、それまでに幸せになるから、私には関係ないけどね)、ぐらい思っていた。
それが、どうして?
私が、その立場にならなきゃいけないのよ!
 

二人の思い出の場所。『割烹ゑびす』銀杏の間。
そこに行けば、彼に会えるような気がして、今夜、訪れたのだった。
私は、おしゃれをした。春らしく、今年流行の花柄のワンピースにレギンス。Gジャンを合わせている。
アクセサリーは、大きめの白いネックレス。
メイクだって、新作の白いグルグルの入ったファンデーションをつけてみた。
精一杯、明るい格好をした。
会っても・・・、多分、私から話すことは出来ないだろう・・・。せめて、姿を見かけるだけでもいい・・・。
ひょっとしたら、出会った頃みたいに、声を掛けてくれるかもしれない・・・。
 
さすがに、そこまで考えて、一人ポツンと銀杏の間にいるという現実に気づくと、激しい自己嫌悪が襲って来た。
惨めだった・・・。
「はぁ・・・。私って、バカだなあ・・・」
どこからか、ノラ・ジョーンズのドント・ノウ・ホワイが流れて来て、一層、切ない気持ちになる。
「はぁ・・・」
 
もう立ち直れるかどうかも分からない。
若い頃、失恋したことは何度かあるが、すぐ次の恋がやって来たような気がしたし、
恋愛以外に、もっと私の存在証明をするものが、周りにいっぱいあったような気がする。
何故だろう?今でも、いっぱいあるはずだ。仕事とか。仲間とか。夢とか。希望とか。
それが、どうして?
「はぁ・・・」
考えるのが苦痛だ・・・。
 
突然の「さようなら」
私には、幸せのゴールテープが近くに見えていたのに、一瞬にして、暗闇に放り出されたようだった。
視界がグニャリと歪んだのは、初めての経験だった・・・。
真っ直ぐ歩けていない・・・。
地下鉄で、なんとかアパートにたどり着いて、思考が停止し、ただただボーッとしているしかなかった。
 
その時から、もう一ヶ月が経っているというのに。
また不意に、止めどなく涙がこぼれ落ちてしまいそうだ。
あの日から思い出しては泣いて、思い出しては泣いてを繰り返している。
それが、どうして?
泣いても泣いても、全然、楽にならない・・・。
若い頃なら一晩中泣いて、全て終わって、ケロッとしていたはずなのに。
 
銀杏の間で一人、シクシクと泣いていると、襖が開く音がした。
スッ。
着物姿の女将が入って来た。
泣いているのを気づかれるのが嫌で、私は顔を背け、バッグからハンカチを取り出す。
「ようこそいらっしゃいませ」
上目使いで女将を見ると、優しい微笑みをたたえているが、強い眼差しで私の様子を伺っている。
多分・・・、泣いていることに、気づいているだろう。
以前、彼と二人でここを訪れ、今は、惨めに一人で来ていることにも、きっと気づいているだろう。
短い沈黙の後、
「・・・美味しい白ワインがあるんですよ。どうですか?
イタリア産です。キリリとした辛口ですけど・・・、お口に合うかしら。
ただいまご用意致します。お待ち下さいませ」
そう言って、女将は静かに退室する。
 
スッ。
再び、襖が開き、冷えた白ワインと殻付きの鮮やかな赤色のボイルえびを持って、女将が入って来た。
Dscn1931
ワイングラスをふたつ、テーブルの上に置き、ひとつを私の前に置き、ひとつを自分の前に置く。
「わたしも頂いていいかしら?」
そう言って、女将が微笑む。
「これ・・・なんて読むのかしらね?」
女将は、ワインのラベルをまじまじと見ながら、ケラケラと笑っている。
ワインを注ぐと、コッ、コッ、コッ、コッと規則的な音が銀杏の間に響く。心地良いと、私は思う。
「では、乾杯!」
女将が言い、グラスを合わせる。
カチン!
私も「乾杯・・・」と、小声で言う。
 
冷えたワインが喉を滑り落ちる。
「美味しい・・・」
そして、まだ、湯気が立ち上る真っ赤なえびの殻を剥き、小鉢のマヨネーズにつけ、ひと口。
パクリ!
「すっ、すごーい!プリプリしていて美味しい!」
「ふふふ・・・さっきまで、泣いていたのが嘘みたいね」
女将がそう言って、微笑む。
(げっ!やっぱり、気づいていたんだ。恥ずかしい・・・)私は、照れてうつむく。
「これは、ブラックタイガーえびって言うんですよ。
このえびの特徴は、体色は青味がかった灰色ですが、加熱すると鮮やかな赤色になることなんです」
「ホントだ・・・」
「でしょ。それと、このプリプリ感!他のえびと比較してもずんぐりとしているので、食感が好評なんです」
再び、私は、まだ湯気の上っている真っ赤になったブラックタイガーえびを手に取り、殻を剥く。
「熱っ、熱っ、熱っ」
そして、マヨネーズをつけ、もうひと口。
パクリ!
噛むたびに、プリッ、プリッと、音が聞こえてきそうなほどだ。
「ふふふ」と、女将が嬉しそうに笑う。
 
「このブラックタイガーえびも、最近よく耳にするバナメイえびもそうですが、養殖なんです。
”養殖”って聞くと不安かしら?薬で管理されているってイメージかしら?
このえびは、インドネシアのタラカン市で養殖されているんですけど、”粗放養殖”なんです。
人工的に区画された池で、餌を与える”集約養殖”と違って、自然に近い環境での放し飼いなんですよ。
1㎡当たり、1~3尾程度で、悠々と暮らしているなんて、うらやましいわ・・・。
そのせいかしら、養殖密度が低いから、伸び伸び育って、大型のえびが多いんです。
わたしの家なんて、狭くて狭くて、嫌になっちゃう。ふふふ」
「確かに、食べ応えのある大きさ・・・」
「あっ、そうそう。放し飼いだからって、全く管理されていない訳ではないのよ。
入荷した原料は、池毎にコードが決められていて、トレースが出来る仕組みになっているの。
・・・安心・安全の確保って、今の時代、とっても重要ね」
シリアスな問題。
私は、公私ともに暗いニュースが多い毎日を思い浮かべ、白ワインをグイッと飲む。キリリと喉に心地良い。
 
「赤って、食欲をそそりますよね。元気が出そう!」
ワインの力を借りた笑顔で私が言うと、女将が答える。
「ボイルする前のえびの色を見ますか?」
「えっ?」
スッと、襖が開き、運ばれてきたのは、グツグツと煮立った鍋と青味がかった灰色のえびだ。
「これがボイルする前のブラックタイガーえびです。
いいですか?見ていて下さい」
女将が鍋にブラックタイガーえびを入れ、塩を振る」
パッ。パッ。
私は、鍋の中をのぞき、思わず声を上げる。
Dscn1927
「わーっ!すごい!あっと言う間に、真っ赤に変わっていくー!」
はしゃぐ私を、女将が母親のような、お姉ちゃんのような、親友のような視線で見守っている。
 
「・・・そうか・・・」
私は、つぶやく。
「すっかり、ふさぎ込んで、私、灰色にくすんでた・・・、もっと、前向きに変われるかな?」
顔を上げ、女将を見る。
今の私の顔は、昨日までの私の顔ではないはずだ・・・。
「大丈夫ですよ。きっと・・・鮮やかな自分色に変われますよ」
自分色・・・。
グツグツ。グツグツ。
私も、沸騰したお鍋の中にブラックタイガーえびを入れてみる。
そして、ゆらゆらと揺れながら、真っ赤に変わってゆく様子を、しばらく眺めていた。
 
 
Dscn1923
ニチレイ『粗放養殖 殻付ブラックタイガーえび』は、トドックで間もなく発売です。ご期待下さい!

コメント: 1

KAZU! 2008年4月24日 05:35

松紫さん!お早う御座います!そうですね!人生には、こう云う事がしばしば在りますよね!「ノラ!ジョーンズ!」懐かしい響きですね!廻りめく季節の様にですね!!みんな、人生と云う舞台の中でもがき演じて死んでいくのです!ですから!!!!
「セ・ラ・ヴィ!!」なのです!
今回の状況は春より!秋ですね!!

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