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個室『銀杏の間』にて ~第十話~

208X年。

富士山の大爆発から60年、首都が仙台に遷ってから50年が経つという。

富士山の噴火の数時間後、風に運ばれた火山灰は、東京の空を真っ黒く覆い、地上に降り落ち、コンピューターの中に入り込み、多くの障害をもたらした。

被害は意外に大きく、何ヶ月にも渡り、首都機能は正常化しなかった。

国民のストレスもピークに達した頃、追い討ちをかけるように、南関東直下地震が発生した。

360万人もの死者、行方不明者を出し、液状化現象で地盤は大きく変化した。

ライフラインは完全に停止し、疫病が発生し、首都の機能は完全に麻痺したのだった。

あちらこちらで暴動が起こり、多くの人が心的外傷性ストレスと診断された。

 

 

地球の温暖化は留まることなく、オゾン層は破壊され続け、100年前からの比較では、年平均気温は5℃上昇した。

砂漠化が進む一方で、降水量も増えた。局地的な大雨が頻繁に起こった。

間もなく、火星に宇宙ステーションが完成するというニュースが流れている。フロンティア17号という名だ。

テレビは、3D映像を実現し、音と映像に加え、匂いも届けるようになった。

 

経済格差は広がっていた。それとはお構いなしに、テクノロジーは進歩し続けた。

今の日本は、荒廃と人類が想像した明るい未来が入り組んでいる。

 

私たちは、巨大なビニールハウスの中で生活している。

街全体が、そのビニールハウスに包まれ、外気と遮断され、温度管理された中で人々は快適な生活を送っていた。

緑が栽培され、紫外線が抑えられた太陽光が届き、人工の雨が降り、人工の風が吹いている。

住宅地、オフィス街、ショッピングモール、レジャー施設、農地、養殖池、工場地など、それぞれが巨大なビニールハウスに包まれている。

そのビニールハウスの集合体が、都市と呼ばれた。

都市と都市を結ぶ交通網は、リニアモーターカーだ。

 

その店は、開発途中のビニールハウスの中にあった。

『割烹ゑびす』と書かれた汚れた看板を掲げている。

荒野にポツン、とあるような佇まいだ。

昔の映像で観たことがある、マカロニウエスタンに出てくるバーに似ている、と思った。

その映像は本当に古く、ストーリーはよく憶えていないが、

荒野のバーの前で、ポンチョを着た男二人がピストルで撃ち合っていた。

そんな時代から、世界はめまぐるしい変化を遂げている。

 

私は、割烹ゑびすの白い扉を押し開ける。

中はだだっ広く、殺風景だ。

カウンターの上には、不自然に鴨居があり、そこに銀杏の間と書かれた箇所の、真下のスツールに私は腰掛ける。

ベビーフェイスの女が、無愛想に注文を聞く。

なぜ、カウンターの上に鴨居があるのかと聞くと、古い建物なので分からない、と答えた。

私は、発泡酒とビーンズを頼む。

日本人の食生活は、大きく変化していた。

食料は、サプリメントとフリーズドライの宇宙食と骨まで食べられる魚が主流となっていた。

 

骨まで食べられる魚は、21世紀の初めにスポットが当たった。

骨に含まれるカルシウム、栄養分の摂取が出来ることで、効率の良い食料として、今、再び注目を浴びている。

骨まで食べられることで、子供や高齢者に食べやすいこと、手軽さ、ゴミが出ないこと、栄養が豊富なこと、が水産物需要の回復のきっかけになっているらしい。

開発当初は、値段が高く、味付と調理にバリエーションがなく、食卓に上がる機会は少なかったようだが、

味、調理のバリエーションも大幅に改善され、高齢化社会の中で、徐々に浸透していった。

栄養価は高いが、素材の在り方、食文化としての趣は無くなった。

 

宇宙食もそうだ。

長期保存が可能なこと、強い臭気が無いこと、軽量であること、飛散しないこと、栄養価に優れていること。

以上が、宇宙食の条件だが、食べ物の形は大きく変化した。

えっ?これがアイスクリームなの?と思うようなことがあった。

食べることに機能性を求めて久しいが、

既に、食は文化ではなくなっていた。

 

私の隣の隣の席に、女が座っている。

私は、隣に座ってもいいですか?、と話し掛ける。

「どうぞ」

そう言って、微笑みをよこす姿がスマートで、ソフィストケイトされた印象を受ける。

笑顔にも様々な種類があるが、人を心地良い気分にさせるお手本のような笑顔だ、と私は思った。

ナナコという名前の女。

身振り手振りを交えて話す、その手の動きが綺麗だと思った。

手話をやっているの?と聞くと、ビーンズをかじりながら、フラをやっているのよ、と答えた。

「・・・いつの時代もダンスは復興のシンボルなの。・・・未来へと繋がっているような気がして」

そうか・・・。

 

「はい。うまみ干しホッケ」

2007_10020004

ベビーフェイスの女が、ガチャ、と音を立て、無愛想にカウンターの上に置く。

うまみ干しホッケ・・・小さい頃から食べていた魚だ。

「私もこれスキ!美味しいよね!美味しいー!と思う食べ物って、年々少なくなってきてると思わない?これは、本当にスキ!」

そう言って、ナナコは箸を伸ばし、ひと口・・・。

そして、笑顔。

 

うまみ干しホッケの美味しさの理由。

背骨の真ん中から切られている、センターカットという技術!

しまほっけだからこそ!と言っていい。

真ほっけの開きは、通常、片側に中骨が付いているので、

開きの右と左、骨の有る方と無い方では、食べ方がまるで違う。

骨の有る方は、中骨をピリピリと剥がし、骨に付いている薄い身にかぶりつく。

骨の無い方は、身が直接乾燥され、焼かれている為、硬く、箸が刺さりずらい。

ところが、うまみ干しホッケのセンターカットは違う!

中骨が真っ二つに切られている為、骨を剥がす時のピリピリと、それにかぶりつく醍醐味は味わえないが、

薄い中骨を剥がした時の、脂のジューシーさは、他に類を見ない。

当然だが、原料のしまほっけも吟味されている。

産卵前の11月~2月に、ロシア海域沿岸で漁獲されているものに限定して作られている。

そして、まろやか味に仕上げる天日塩。

過去、しまほっけの加工品は多くあったが、うまみ干しホッケ以外には出せない、身の締り具合。

しまほっけの製品の中で、No.1を極めた味・・・。

それは、100年前から変わらない・・・。

ロングセラー。

いつの時代も愛される味。

 

21世紀も終わりを迎えようとしている。

日本人の食生活は、大きく変化していた。しかし、変化していないところもある。

食料は、サプリメントとフリーズドライの宇宙食と骨まで食べられる魚、

そして、うまみ干しホッケが主流となっていた。

 

「本当に美味しい・・・」

ねぇ、また、一緒に食べに来ようか?

 

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