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個室『銀杏の間』にて ~第八話~

ナナコのトートバッグから顔をのぞかせている雑誌の表紙に、『激うま料理特集』と見出しがある。

TVも雑誌もそうだが、食欲の秋のグルメシーズンになると、必ず組まれる特集だ。

激うま、って何だよ?どんだけだよ。

私は、笑ってナナコに尋ねる。

「えっ?あっ、この雑誌のこと?激うまって、・・・すごく美味しいってことじゃない?」

・・・なんてクールな答えなんだろう。

私は、そういう意味じゃなくてさ・・・、と言い掛けて、止めた。

年に何回かは、呼吸や波長が合わない日もある。

 

ジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュジュ~

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『割烹ゑびす』の厨房で、何かが焼き上がっていく音が、ここ銀杏の間まで聞こえてくる。

襖がスッと開き、部屋中に広がる香ばしさ・・・。

「えび餃子です」

 

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この餃子、小さいが、実に見事なピンク色をしている。

私は、戸惑っていた。

想像していたえび餃子とは、余りにもかけ離れていたからだ。

ひと口で食べることが出来るサイズだが、まずは半分。パクリ。

ジュッ!

弾けるように、えびの旨みが口の中に広がる。そして、プリップリッとした歯応え!

これは・・・、バナメイえび。

ブラックタイガーえびと比較して、身質は柔らかいが、甘みがある。

餃子のピンク色の正体は、中身のえびの量だ。

通常のえび餃子のえび配合率は、15~20%と言われているが、

こいつはスゴイ・・・約3倍、60%はバナメイだ。

殻むきされたえびが、カットされることなく、丸ごと入っている。

ブラックタイガーより小さいバナメイだからこそ、実現したこの食感!

この旨み!甘み!食感!風味!

そうか、そうか・・・さては、産地一回凍結だな。

私は、謎を解いた探偵のように、ニヤリとした顔付きになる。

「何よっ、気持ち悪~い」

エヘヘ、となぜか私は、愛想笑いだ。

中国では、餃子は縁起の良い食べ物として、珍重されているらしいよ、ナナコも食べたら?・・・激うまだよ。エヘヘ。

そんな感じだ。

 

餃子と言えば・・・、忘れられない思い出がある。

もう、何年前になるだろう・・・。

 

その頃の私は、ひどく荒んでいた。

仕事が上手くいかない理由も、人を信用できない理由も、自分が変われない理由も、私は全てを、社会や親や周りの環境のせいにしていた。

何の考えもなく、何の理想も掲げず、全てにおいて中途半端で、自分勝手に生きていた頃だ。

当然、人の優しさにも、怒りにも、寂しさにも、喜びにも気づくことはなかった。

実家に帰っては愚痴をこぼし、母親、父親が心配に思うからこそ言ってくれた、ひと言ひと言が憎らしく、疎ましく感じられた。

 

・・・ほんの些細な事だったと思う。

母親に手を上げたことがあった。初めてのことだった・・・。

ベチッ、と鈍い音がして、右手が痺れて、胸が張り裂けそうなぐらい、ズキンと痛んだ・・・。

すぐに、父親に殴られたが、左の頬の痛さなど問題にならないほど、胸が痛くて仕方がなかった。

「あなたは、優しさに欠落しているのよ!」

母親が泣きながら言った言葉だ。

それから、何度か実家に帰ることがあったが、会話は当然のように減っていった。

私は、この溝の深さを感じながらも、どうして埋めたらいいのか分からないまま、

大切な問題から逃げるように、ただ時間が過ぎていくのを、やり過ごしていた。

 

そんな頃だ。・・・あの男に会ったのは。

割烹ゑびすで、たまたまカウンターの隣の席に座った、熊のような体格の男。

他人だからという距離感と、田酒の酔いに任せて、私は懺悔をするように、その男にこの事を話した。

ゑびすを出た後、男は黙って、ガード下のカウンターしかない小さな店へと私を連れ出した。

東南アジア系の店主が、餃子を焼いている。

「食べてみなよ」

Photo

出された熱々の餃子をひと口、パクリ。

ジュッ!と出る肉汁。

「美味いだろ。これは、自分の人生と真っ直ぐに向き合っている人間が出せる、正直のジュッ!だ」

正直のジュッ?

「進化する良さもある。

しかし、変わらないという良さもある。

大切なのは・・・そこに、自分の正直さがあるかどうかだ。

何年か後、またここへ来て、この餃子を食べた時、

ますます美味しくなっていることに感動するかもしれない。

もしくは、あの時と同じ味だと安心するかもしれない。

どちらでもいいんだよ。

流されず、自分に正直になることだ。

どうだ、美味しいだろ?」

・・・。

「なんてな。ジュッ!は、国産豚肉を使っているからだブー」

・・・私は、もう一度ひと口、パクリ。

肉汁がジュッ!

そうだ・・・。正直さが、ジュッ!と出ている。

 

そのあと、幾つ餃子を食べたか分からない。

気が付くと、白々とした朝日を浴びながら、中央分離帯の緑の上で仰向けになっていた。

 

その日の夜。

私は餃子を買って、実家へと帰った。

あれから、たどたどしい会話しか出来ていない母親と父親に、

昨夜、男に教えてもらった、餃子のいろいろな話を聞かせるつもりだ。

日本の餃子は、戦後、満州を経由して入って来たんだよ。

蒸す時に、水に片栗粉を加えると、焼き上がった後にパリパリと薄皮が出来るよね。あれ、羽根つき餃子って言うんだよ。

餃子で有名な街は、宇都宮、静岡、浜松、神戸、福島。宇都宮には、JR駅の東口に餃子像があるんだよ。浜松の餃子には、モヤシが添えてあるし、神戸は、味噌ダレで食べるんだって。

実家のテーブルに餃子を広げるまで、私は何度もこの話を復唱した。

 

餃子買ってきた。食べてよ。

多少、ぶっきら棒な言い方になった。

私は、餃子をテーブルに広げ、自ら箸を伸ばし、ひと口、パクリ。

口いっぱいに広がる、正直のジュッ!

その時、頭の中をめぐったのは、まだ小さい私の手を引いて、遊歩道を歩く母親の姿だった。その手から温かさが伝わり、私はすっかり安心している・・・。

・・・不覚にも、その後、私が口にしたのは、何度も復唱した餃子の話ではなかった。

・・・ごめんなさい。

ごめん・・・ごめん・・・ごめん・・・、ごめん、お母さん。ごめん、お父さん。

どうしようもないほど、まぶたの裏が熱くなり、何かがこぼれるのが分かったが、もう、どうにもならなかった。

ごめん、ごめん。ごめんなさい・・・。

 

・・・。

「ねぇ、どうしたのよ」

ナナコが心配そうな顔で、私を見つめる。

何でもないよ・・・、ちょっと、昔の事を思い出して。

・・・また、あの男に会えるだろうか・・・。

(すぐに、会えるブー)http://www.deli-boo.jp/

 

私は、えびたっぷりの焼餃子をひと口、パクリ。

正直のジュッ!

ナナコ、いつも食事に付き合ってくれて、ありがとう・・・。

ナナコもひと口、ジュッ!

「えっ?何言ってのー、この人キモーイ!」

・・・年に何回かは、呼吸や波長が合わない日もある・・・。

 

Dscn1548  

えびの旨みがジュッ!の「えびたっぷり焼餃子」はトドックで発売中です。

肉汁がジュッ!の手包みの焼餃子は、店内厨房で焼き上げて、デリカコーナーで発売中です。

是非、ご賞味下さい。

 

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