- 2007年9月18日 06:00
- 個室「銀杏の間にて」
EWF(アース・ウインド・アンド・ファイアー)のセプテンバーが聴こえている。
今日は、確か・・・土曜日。休日のはずだ。
ベッドでまどろんでいた私は、この曲が、ケータイの”着うた”だと気づくのに、ややしばらく掛ってしまった。
普段は、マナーモードにしているのだが、気づかないうちに解除をしたのだろう。
そうか・・・着メロは、EWFだったか、と懐かしんでいるうちに、切れてしまった。
AM11時27分。
着信メモリーを見る。
ナナコからだ。
ナナコから連絡があるのは、非常に珍しいことだ。
食事の誘いも、他愛もない会話も、メールも、大体、私の方からだ。
そのような状態なので、甘い期待を持ちながら、
ナナコのケータイに、TELを掛ける。
「ごめん。いっぱい買い物しちゃって」
ナナコの甘えた声だ。嫌味な感じがしないのがいい。
重たい荷物を持って歩きたくないので、車で家まで送って欲しい、ということらしい。
TEL越しの声は、想像力を必要以上にかき立てる。
髪をアップにして、タイトな黒いスーツを着て、疲れているけど背筋がシャンと伸び、おねだりの笑顔の唇のグロスが濡れている・・・。
大至急行かなくては!
ひと昔前のアッシー君というヤツだが、最近は、それぐらいの関係がちょうどいいような気さえしている。
薄いオレンジ色の初代ジェミニの4ドアセダン、5速マニュアルでナナコを迎えに行く。
以前、ナナコに、女性と会う時は、花ぐらい持って来るべきよ、みたいな事を言われたような。
・・・さすがに、花は照れくさい。
せめて、いいドライブになるように、ELT(エブリィ・リトル・シング)のCDをセットした。
昔、よく聴いていて、晴れた日に良く合う曲。出会った頃のように・・・か。
アクセルを踏み込む。古い車だが、ハンドリングのシャープさは健在だ。
人の行き交う駅前の交差点。
想像とは違い、ネイビーのサテン地のワンピースをレギンスでカジュアルに着こなしているナナコがいた。
紙袋をいっぱい抱えているので、小さく手を振って合図を送ってくる。
バックシートに紙袋を置いて、ナナコが助手席に乗り込む。
「ごめんね。ランチおごるから、許して!
ねぇ、何買ったか知りたい?発表しまーす!
ボウタイ付きブラウスは今年の流行、シルク100%だから光沢があって軽やかな素材なの。そして、深みのあるパープルが秋色のチュニックでしょ、ヒール8.5cmのTストラップのシャンパンゴールドのパンプスでしょ、それと・・・赤のエナメルのクラシカルな小バッグかな。
・・・ELTかぁ、懐かしいねぇ~」
買い物を終えたナナコは、いささかテンションが高い。それで、ランチはどこで?
「いつもの『割烹ゑびす』だよ」
えっ?ランチもやってるの?
銀杏の間も、昼と夜では、別の表情を持っている。
すりガラスの内窓を開け、外の景色を見えるようにして、開放的な雰囲気の空間を造り出している。
種類こそ少ないが、メニューもガラリと違う。
夜は、創作料理がメインで、ゆったりとした時間の流れを感じるが、昼は、洋食がメニューリストに並び、時の流れが慌しい。
客の入りはいいようだ。
早い時間なので、女将はいない。
メニューには、サンドウィッチ、パスタ、カレー、スープ、サラダ、ドリンク等のコンテンツが並んでいる。
恵比寿カーデンプレイスで食べた、新宿中村屋のチキンカレーが美味しかった、などと思い出しながら、
タラバガニのシーフードカレーも捨てがたいが、私は、スモークサーモンとクリームチーズのサンドウィッチとクラムチャウダーを頼む。
「私もそれにしよーっと!」
ナナコが微笑みかける。
クラムチャウダー。
アメリカ東海岸、ニューイングランドが発祥地。
二枚貝のクリームスープだ。
タマネギ、ジャガイモは必須素材。あさり、はまぐりがよく使われる。
白いクリームスープはニューイングランド風。マンハッタン風は、赤いトマトスープだ。
NY・マンハッタン・・・、憧れの単語だが、やはりクリームスープの魅力には負ける。
運ばれてきたのは、あさりのクラムチャウダー。
温めた牛乳の香りがいい。
私はクリームシチュー系の匂いを嗅ぐと、あたたかい食卓の風景が脳裏に浮かぶ。
この気持ちは、なんと言うか・・・郷愁・・・。
かあちゃーん!晩ごはんは、クリームシチューがいいなー!
言ったことのない台詞だが、何気ない夕焼けのシーンで、思わず叫んでしまいそうなほどだ。
クラムチャウダーとコーンクリームスープとミネストローネから、どれか一品お選び下さい、と言われたら、
間違いなく、クラムチャウダーを選ぶだろう。
銀色のスプーンでかき混ぜると、具材の密度とスープの濃度が伝わってくる。
ひと口・・・。
口中に広がる、あさりのエキスとみじん切りのタマネギ。それを喉の奥へと押し流す、程よい濃度の牛乳でまとめ上げたスープ。
・・・郷愁。
そして、このサンドウィッチ。
スモークサーモンの場合は、ベーグル、フランスパン等の硬めのパンがマッチする。
隙間からチラリと顔をのぞかせている、このスモークサーモンは・・・紅鮭。
ガブリとひと口!
上品だ!これぐらいの脂の感じがいい。ギトギトではなく、シットリとしている。
スモークのクセのない、この風味からすると・・・山桜のチップを使っているな。
口当たりの良さは、冷燻だ!多分・・・間違いない。
20℃ぐらいの低温で、じっくりとスモークと乾燥の工程を行っているからこそ実現するこの食感!
産地は・・・アラスカか?・・・アラスカ・・・。
そう言えば、MSCマークって知ってる?
「吉本の養成所だっけ?あれは、NSCか。MSCは・・・、えーと・・・海のエコマーク?」
おっ!いい線だ!
マリン・ステュワードシップ・カウンシルの頭文字を取って、MSC。
NSCは、吉本総合芸能学院。ちなみに、ニュー・スター・クリエーションの略。じゃあ、WWFは?
「世界自然保護基金」
即答!ワールド・ワイド・ファンド・オブ・ネイチャーの略だ。
世界最大の民間自然保護団体で、パンダのイラストがデザインされたマークを、一度は見たことがあると思う。
NGO。ノン・ガバメンタル・オーガニゼーションの略で、非政府組織だ。
MSCは、WWFが推進している海洋管理協議会。
MSCマークは、海の環境を保全しながら、天然の海産物を持続的に利用していくために、計画的に漁をしている製品を認証して、環境に配慮している商品であることを知らせるものだ。
う~ん、難しい・・・。
背景には、危機に立つ、海の資源の問題がある。
トロール船の各海域での広範な操業。生態系の破壊。乱開発と水質汚濁。エルニーニョ現象による海水温の上昇等。それらが、複合的に作用している。
今、私に出来ることと言えば・・・エコロジー、ECO。
「なんだか、アルファベッド三文字ばかりで、分かりづらーい!」
ちょっとイラッとしたナナコの表情だが、それも一瞬。すぐに、大きな口元で、私に笑顔を向けてくる。
「クラムチャウダーって、なんだか懐かしい味がするよね」
そんなナナコにTKO!みたいな・・・。
「牛乳でつくるクラムチャウダー」は、トドックでお求めになれます。
アラスカ産の「COOP紅鮭スモークサーモン切り落とし」、「COOP紅鮭すじこ醤油漬」にMSCマークが付きます。10月以降のご注文でお届けになりますので、紙面で見掛けたら、是非!
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