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個室『銀杏の間』にて ~第三話~

夕暮れの早い時間に、

私は、ここ『割烹ゑびす』の銀杏に間に来ている。

ベビーフェイスだが凛とした振る舞いの女将が、細く窓を開けると、湿度のない風がスッと通り過ぎる。

通りを走る自転車のチリンチリンというベルの音が聞こえてきて、遠ざかってゆく。

夏の長い夕暮れは心地いい。

 

ナナコはすでに私の向かいに座っている。

バンダナ風に巻いたスカーフと大きめの白いネックレスから活発な印象を受ける。

スカーフは、大きめの図柄のデザインから推測すると、おそらくエミリオ・プッチだろう。

私はナナコといる時間に随分、ブランドの名前を覚えた。

クロエのバッグ、フランチェスコ・ビアジア、フォリフォリのアクセサリー、エンビィのフレグランスなど、だ。

 

私はバイタリティが溢れる活発な印象の女性に弱い。

にじみ出るオーラから圧倒的なパワーの差を感じ、

「この女にはかなわない・・・」と、どうしようもない敗北感に包まれ、疲れてしまう。

理由は考えたことはない。

そんな女性に会ったときは、服従するしかない。

・・・

今日のナナコは、そんな感じだ。

 

「この焼魚、可愛い!あじかな?」

Dscn1474

干物と言えばほっけ!という北海道の人から見れば小さく、可愛く映るだろう。

そう、今日の焼魚はあじの開きだ。

 

あじの開きは、長崎、佐賀等の九州の産地、銚子港で水揚げされる千葉産、

海外だとオランダ産、ノルウェー産、韓国産など、

スーパーの店頭で見かける機会も多いと思うけど・・・、

必ず、ラベルに原料原産地の表示が書かれている。

<あじ(○○産)>って感じで。

今度、買い物の時にでも見てみるといいよ。JAS法でさ・・・。

 

・・・

一瞬の静寂。

他愛もない短い会話の最中、

ナナコのグロスを乗せた唇がテラテラと光るたびに、私の視線は、その口元に釘付けになってしまう。

多分、そんな私の気持ちに気づいたのだろう。

ナナコは、あっこれ、と言った感じで微笑んで言う。

「夏のメイクって、テカりと崩れを抑えるのに大変!

16時間、崩れずに持続できるファンデーションもあるけど、

大切なのは、毎日のスキンケアなの。”落とすこと”と”洗うこと”をしっかりとやらないとダメ!

そういう基本をきちんとやった後で、

最近は、肌が澄んだ印象に見えるパウダーファンデーションを付けているの。

そして・・・見て!

今日のポイントは目元。ダブルアイラインに大粒のラメ!

ねっ。”目力”あるでしょう?」

 

確かに、吸い込まれそうな”目力”!

唇のグロス、目元のラメ、全体のオーラで、ナナコは無限の輝きを放っている!

やばい!もう負けそうだ!

冷静になれ!と自分を叱咤する。

 

逃げるように、私の視線は御膳にのったあじの開きへと移る。

幾分丸い形をしたこのあじは・・・と箸を伸ばす。

おっ、ものすごく脂がのっている!・・・こんなに脂が。多分、脂肪率は12%ぐらいだろう。

テラテラと輝く身をほぐして、口に運ぶ。身離れもいい!

ひと口、ふた口・・・。

う~ん、これほどのあじの開きは、今までに食べたことがないような・・・。

 

あじには黄あじと呼ばれるものと、黒系のあじがあると言う。

黄あじは脂があり、脂肪率が10%以上の高いものもあるが、黒系のあじの脂肪率は3~5%といったところだ。

千葉産、鹿児島産は黒系と言われている。

オランダのあじにも2種類ある。

ドーバー海峡を通り、ビスケー湾で獲るあじは黒系。

近海が黄あじだ。

いわゆる瀬つきと呼ばれていて、脂のりがいいと言う。

潮と潮の流れがぶつかるところは、プランクトンが多く、

そこにいるあじは、運動量が少ない状態で、豊富な栄養が摂れる訳だ。

 

さて、このあじだけど、

まず、この形・・・縦に太るタイプだな。開きにすると丸い形になるのが、何よりの証拠。

・・・長崎県対馬産だ!

同じ長崎でも、五島近海のあじは横に太るので、見た目は小さいが身厚だ。

どちらも甲乙つけがたい。

そして、この脂のりの良さからすると、5月~7月に水揚げされたものだろう。

ほっけの開きに勝るとも劣らない、この脂の感じは・・・6月!

例えば、これが1ヶ月前の5月だとしたら・・・。

日本近海のあじは、ただでさえ身に味がある。5月なら、独特の身の味がもっと強いはずだ。

あじ好きなら、間違いなく5月の長崎県産だろうけど・・・、

北海道の人が好む味となると・・・

やっぱりコレだろう。

6月の長崎の開きあじ!

 

塩加減もいい!1.2~1.3%といったところか。

焼かれる前の姿を想像すると、

20℃以下の冷風乾燥で、1時間ほど干された身質の鮮度感が、まぶたの裏側に映る。

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私は、まさにパクパク!パクパク!というリズムで1枚を食べ終える。

 

この美味しい食事をしている瞬間だけ、私はどうしようもない敗北感から解き放たれている。

ナナコのような、バイタリティが溢れる活発な女性といる時は、

美味しい食事が必要だと、私はつくづく思う。

 

「口に脂がついて、グロスみたいだね」

フラを習っているというナナコの優雅な動きの指先が、そっと私の唇を指す。

 

・・・脂がのり過ぎて、テカりを抑えるのに大変なんだよ・・・。

 

「長崎県産の開きあじ」。今年の漁模様は良くありませんが、店頭・トドック紙面で見かけたら、是非、ご賞味下さい。

ちなみに、トドックでは11月に企画投入の予定です。

 

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