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個室『銀杏の間』にて ~第二話~

ナナコは4年前に別れた私の元妻だ。

今風に表すと”元ツマ・元ダン”といった感じだが、

実際は、一度夫婦になり別れると、そんな軽い感じの関係ではなくなる。

1年ほど前から、再び会うようになった。

ここ最近は月に1~2回ペースで会っており、

ここ『割烹ゑびす』の銀杏の間で食事をしている。

(・・・月に1~2回というのは、私のセコい見栄で、実は週1回のペースで会っている。

今までのほとんどが、私から誘っている)

・・・恥ずかしい話だが、未練がある。

 

ナナコは化粧品メーカーの美容部員をしており、百貨店に勤務している。

なんとかデコルテという名前だったような気がするが、よく覚えていない。

何だっけ?と聞くと、

「本当に人の話を聞いてないよね!」

と本気で怒り、しばらく無口になるので、聞かないようにしている。

美人は怒ると怖いものだ。

 

カツカツと小気味良い靴音をさせて、スッと襖を開け、ナナコが入ってきた。

 

私は女性と会う時、最初に髪型を見るようにしている。

ヘアースタイルが変わった時は、真っ先にその事を口にして、褒めるようにしている。

女性の大半はヘアースタイルの変化に気づかないと怒ったり、不機嫌になったりする。

美人は怒ると怖いものだ。

 

今日のナナコのヘアースタイルは以前のままだ。

「毛がになんて、贅沢ね」

Photo_8

そう言って微笑み、私の向かいに座る。

 

これは、宗谷の前浜の毛がにだよ。

Photo_9

宗谷の毛がに漁は3月中旬。ちょうど、秋の産卵時期から体力が回復している頃だ。

間宮海峡は潮の流れが速く、そこで踏ん張っている毛がには当然、身に締まりがある。

そう言えば、

毛がには脱皮する時、ピラミッドのように高く重なってゆく習性があると聞いたことがある。

脱皮の時期は甲羅が薄く、外敵に襲われやすいため、

そうやって重なり合い、身を守っているのだという。

 

山のように重なった毛がにの頂が、海面のあちこちでポコポコと姿をあらわしている風景を、

きっと、

間宮林蔵は眺めていたに違いない。

Dscn1403

しばし、思いを馳せる・・・。

私は今、宗谷岬に立ち、270度はあるであろう水平線を見渡し、40キロ先のサハリンを見つめる・・・。

 

脱皮後の若系の毛がには、ボイルしても味噌が固まりづらく、流れてしまう。

今までだって、甲羅を開けてがっかりしたことは少なくなかった。

だが、目の前にある姿盛りにされたこの毛がには、間違いなく堅がにだ!

味噌の量がハンパじゃない!

大きさも4K8尾サイズ。申し分ない。

剥いた身の全てを、この甲羅の中に入れても、味噌と絡まってお釣りが来るぐらいだ。

そこに、日本酒をスーッと垂らす。

 

そして、一口。

この甘み!間違いなく「浜ゆで」!

もともと漁師が海水で茹でたことから、その名がついた「浜ゆで」。

今は、しっかりと滅菌された海水でボイルされた後に、急速冷凍され、

いつでもその美味しさを愉しむことが出来る「浜ゆで」。

 

ナナコは殻を剥いてなどと、甘えた台詞は言わない。

「かにとスペアリブを食べる時って、野生に帰る!っていう感じよね」

 

その通り!理性では抑えることの出来ない何か!

鮮やかな甲羅の赤味、殻を剥く時のバリバリという音、指に残るかゆみ、口に広がる甘み。

そして、部屋に漂う残り香・・・。

 

不意に見つめ合った後、ナナコは急に不機嫌な表情になる。

「かにの匂いは分るくせに、香水変えたの気づかないんだね!」

 

それほどに五官を刺激する「宗谷産の毛がに」。

是非、トドックでお求め下さい。

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